top of page
20210125 (22).jpg

Nature  自然の風景

「自然」ということばは中国に由来し、最初に現れるのは「無為自然」を格子とする『老子』だろう。自然とは、ある状態を表すことばであり、存在を示す名詞ではない。自然とは自分に関しても万物についても人為の加わらない状態、おのずからある状態の意味。

自然という漢語が日本に入っても、長い間この意味は変わらなかった。江戸時代に洋学が受容されると、英語のネイチャー"nature"、蘭語のナトゥール"natuur"の訳語として「自然」があてられるようになり、日本語のそれまでの自然の意味に重層した。

ネイチャーの古代ギリシア語はフュシス"physis"。フュシスはおのずと生じたもの一般を意味し、それは、人が作り出した規範や慣習を表すノモス"nomos"に対することばである。つまり人為が加わらずに生まれてきた森羅万象をすべて統一的にさすことばであり、老子の自然観と似ている。

 

精神や知覚の対象としての「自然」、という西洋近代哲学・自然科学のとらえかたと、自ずからある状態をさす「自然」という東洋的・日本的なとらえ方が混在しているところに、独特の自然観があるのかもしれない。

2020-11-03 09.44.03-1.jpg
bottom of page